数字が動いていないので、誰も気づかない

Plausible Analytics の料金ページを、2025年6月と8月で並べる。

$9 は $9 のまま。$19 は $19 のまま。ひとつも動いていない。

動いたのはサイト数のほうだった。$9 で見られるサイトが、10個から1個になっている。

値上げの痕跡は価格表に残らない。残らないように設計されている。

価格が据え置きだったことの裏取り

Plausible は料金表を JavaScript の配列としてHTMLに直接埋め込んでいる。保存されたページから当時の価格をそのまま読み出せる、ありがたい実装だ。

2025年6月1日、月間1万PVの段。

const plans=[{volume:"10k",growth:9,business:19}, ...]

2025年8月1日。

const volumesWithPrices=[{volume:"10k",starter:9,growth:14,business:19}, ...]

旧 Growth の 9 が、新 Starter の 9 になっている。旧 Business の 19 は、新 Business の 19 のまま。名前が変わっただけで数字は同一だ。

さらに 2024年1月1日まで遡っても、配列は6月とバイト単位で同じだった。17ヶ月、Plausible は価格を1ドルも上げていない。事実としてそう言える。

動いたのは「その $9 で何が買えるか」

各プランの但し書きを突き合わせると、こちらは派手に動いている。

月額(1万PVの段)2025-062025-08
$9Growth — Up to 10 sitesStarter — One site
$14存在しないGrowth — Up to 3 sites / 3 team
$19Business — Up to 50 sitesBusiness — Up to 10 sites / 10 team

$14 の Growth は新設された層だ。名前だけ追うと「Growth が $9 から $14 に上がった」と読めてしまうが、実際に起きたのは違う。旧 Growth は Starter に改名して価格を据え置き、その上に新しい Growth を挿し込んでいる。

枠のほうは一律で削られた。$9 は10分の1、$19 は5分の1。

同じ使い方を続けるといくら払うのか

サイト数を変えない前提で計算する。1万PVの段。

使っているサイト数変化
1サイトGrowth $9Starter $9±0%
3サイトGrowth $9Growth $14+55%
10サイトGrowth $9Business $19+111%
50サイトBusiness $19Enterprise(要問合せ)不明

1サイトだけの人には何も起きていない。$9 で1サイト、以前と同じだ。

痛いのは複数サイトを1契約にまとめていた層で、まとめていた数が多いほど深く刺さる。50サイトを $19 で回していた利用者に至っては、該当するプランが表から消えた。要問合せ送りである。

個人ブログ1本の利用者は刺激せず、制作会社と複数事業を持つ会社からだけ追加で取る。よくできた設計だと思う。感心はしないが。

公式サイトを何度見ても書いていない

料金ページは「今」しか映さない。過去に何が含まれていたかは載らないし、載せる義理もない。

価格の数字を上げる値上げなら、利用者は気づく。前は $9 だった、と言える。だが今回のように据え置いたまま中身を削ると、気づけるのは上限にぶつかった人だけになる。請求額は変わらないので、明細を見ても何も起きていないように見える。

国内のSaaS比較サイトにこの差分は載らない。載せようがない。あれはベンダーが今公開している情報を並べ替えたものだからだ。差分は、時系列を保存していた側にしか出てこない。

これから契約するなら

Plausible が悪辣だという話をしているのではない。同じことはどのSaaSでも起きるし、実際起きている。

価格だけを横に並べて比較すると、この種の変更は視界に入らない。契約前に見るべきはサイト数とシート数の上限のほうで、そこは価格表の小さい文字に書いてある。Starter のデータ保持が3年と書いてあるのも、同じ小さい文字だ。

1サイトで足りるなら今回の再編は無関係だ。$9 の条件は据え置かれている。複数サイトをまとめるつもりなら、その上限が将来削られる前提で考えたほうがいい。一度に10分の1にした実績がある相手だ。

料金表は値段を見る場所だと思われている。実際には、値段が変わらないまま何かが減っていないかを見る場所だ。

出典

数値はすべて Internet Archive に保存された Plausible 公式サイトから読み出した。埋め込まれた価格配列と、各プランの但し書きを直接確認している。

公式が公開している料金と提供内容という事実のみを扱っている。利用者の投稿やレビューは使っていない。